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反社会的勢力を排除する!~そのために必要な社内体制とは?

【第69回】 贈収賄リスクへの対応(コンプライアンス・プログラムのあり方)

贈収賄リスクへの対応の必要性については、本コラムでも度々取り上げ、「域外適用」問題の企業経営に与えるインパクトの大きさを認識すべきことや、コンプライアンス・プログラムの重要性などを指摘してきました。そのような流れの中、経済産業者が、企業の海外展開を支援するため、不正競争防止法の外国公務員贈賄罪に関する指針(「外国公務員贈賄防止指針」)を改訂し、一定の方向性を提示しました。

▼ 経済産業省 「外国公務員贈賄防止指針」を改訂しました

▼ 外国公務員贈賄防止指針改訂版(以下「指針」)

改訂の主な内容としては、営業関連活動に関する法解釈を明確化するとともに、望ましい贈賄防止体制として、現地エージェントの起用や海外企業の買収といったリスクのある行為について、子会社を含む企業グループとして、社内規程の整備や記録、監査といった体制強化などが提示されています。

今回は、この改訂された指針を紐解きながら、贈収賄防止体制にかかるコンプライアンス・プログラムのあり方について考えてみたいと思います。

今回は詳述しませんが、贈収賄リスクの厳格化として、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の適用事例が急増しています(日本企業も増えています)が、とりわけ、米司法省や米国証券取引委員会(SEC)による制裁や罰金額の決定のプロセスや判断基準の具体的なあり方を見ていると、コンプライアンス・プログラムの整備の重要性だけでなく、平時における運用や事件発覚後の対応のあり方が、制裁等のレベルを大きく左右している実態があります。

そのような動向をふまえ、今回の経産省指針で述べられている、贈収賄防止体制にかかる内部統制システム構築における「留意すべき視点」について紹介したいと思います。本指針では、特に重要な視点として、①経営トップの姿勢・メッセージの重要性、②リスクベース・アプローチ、③贈賄リスクをふまえた子会社における対応の必要性の3つが指摘されています。

① 経営トップの姿勢・メッセージの重要性

日本の商慣行において、贈収賄行為(贈賄行為)は、自らの利益のためというより、従来からの慣行・習慣、潤滑油として、あるいは、「会社のため」という誤った使命感やコンプライアンスの誤解によって、(談合・カルテルなどと並んで)あまり問題視されずに見過ごされてきたリスクのひとつだと思われます。

このような悪弊を排するために、指針では、経営トップ自らが、「現場において、法令を遵守するか、利益獲得のため不正な手段を取るかの二者択一の状況に直面した場合には、迷わず法令遵守を貫くことが中長期的な企業の利益にもつながること」「従業員は不正な手段を利用して獲得した利益は評価されず、厳正に処分されること」「過去に法令遵守を軽視する企業文化があったとしても、そのような「旧弊」は断ち切らなければいけないこと」を、全従業員に対して、明確に、繰り返し示されることが効果的だと指摘しています。

② リスクベース・アプローチ

当社が提唱する反社チェックにおける「層別管理」やアンチ・マネー・ローンダリング(AML)におけるデューデリジェンスの理論・方法論として「リスクベース・アプローチ」が採用されていますが、贈収賄防止体制を整備するにあたっても、本アプローチが推奨されています。

このアプローチは、例えば、リスクが高い事業部門・拠点や業務行為については、高いレベルでの承認ルールの制定・実施、従業員に対する教育活動や内部監査といった対策を重点的に実施してリスク低減を図る一方で、リスクが低い事業部門等については、より簡素化された措置が許容される、と考えるものです。

さらに、指針では、一般的に、アジア・中東・アフリカ・南米等は「高リスク国」であること、その事業の実施に現地政府の多数の許認可を必要とする状況が認められる場合や、外国政府や国有企業との取引が多い場合など外国公務員等と密接な関係を生じやすい性格を持つ場合が「高リスク取引」に該当するとの例示がなされています。また、エージェントやコンサルタントの起用、ジョイントベンチャー組成の相手先の選定、当該国の政府関連事業実績の多い企業のM&A、公共調達への参加、外国公務員等に対する直接、間接の支払を伴う社交行為などが「高リスク行為」であるとも指摘しています。

③ 贈賄リスクを踏まえた子会社における対応の必要性

海外子会社など子会社が国内外の関係法令に基づき外国公務員贈賄罪で処罰される場合には、親会社も、その資産である子会社株式の価値だけでなく、親会社自身の信用も毀損され、さらには、親会社自身に対して刑事罰が科されるといった形で大きな損失を受ける可能性があること、実際の贈賄行為は海外現地法人で行われることが多く、親会社も法人両罰規定により処罰対象となる可能性があることなどが指摘されています。

なお、「効果的なコンプライアンス・プログラム」のフレームワークとしての内部統制システムの整備・運用状況は、企業規模・業種、経済的・社会的環境や時代背景等により評価が異なる(社会情勢によって変化し得る)ものであり、画一的な水準を設定することは適切ではありません。社会の要請の変化、国内外の社会経済の動向などについて情報収集しながら、「コンプライアンス」という言葉が、「相手のものの形に従ってそのものが変形するときの『柔らかさ』や『柔軟性』などを意味する」ことをふまえ、柔軟かつ速やかに改善・見直しを図ることが求められます。

 

専門家ご紹介

株式会社エス・ピー・ネットワーク

総合研究室 主任研究員 芳賀  恒人 さん

警視庁・道府県警の出身者をはじめ、企業危機管理に伴う法務・労務・財務・広報等の専門家で構成されるクライシス・リスクマネジメント専門企業。

反社会的勢力の見極めから排除実務、企業不祥事等に伴う緊急対策支援に至る「直面する危機(クライシス)」対策等に数多くの実績を有し、実践から導かれた理論に基づき「潜在する危機(リスク)」の発現を未然防止するためのコンサルティングと人的支援を展開する。従来の枠に留まらない危機管理的視点からの実践的なコンプライアンス体制や内部統制システムの構築を多くの企業で手がける。会社法の改正等の経済界の流れを先取りした先駆的企業危機管理論には、上場企業や株式公開を目指す企業だけでなく、金融機関や監査法人からの支持も厚い。

筆者は、企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする内部統制システム構築を専門分野とするリスクアナリストとして、これまでに、企業の反社会的勢力排除の内部統制システム構築・運用支援コンサルティングや排除計画の策定・対応支援等の業務を多数手がけるほか、「SPNレポート~企業における反社会的勢力排除への取組み編」を取りまとめ、犯罪対策閣僚会議下の「暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム」での報告をはじめとして、企業の反社会的勢力排除に向けた取組みに関する講演等を数多く行っている。

今回の掲載にあたって

企業が反社会的勢力を排除するために、どのような社内体制を、どのような点に注意して整備すべきか、実務に即した観点でわかりやすくお話していきます。

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